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小倉さんは考えた

やわらかければうまい。そう習ったよ。

机上の空論でLINEを成功させた天才の話

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なぜLINEは成功したのか?
納得のいく説明を聞いたことがない。

LINEは特別な機能をもってる訳ではなく、UI UXが優れてる訳でもない。
だがLINEは圧勝した。

今回はこの勝因について書く。今から述べることはマーケティングの教科書に載るべきレベルの話だ。 

LINEは革新的なアプリではない。
むしろチャットアプリとしては後発だ。

ではなぜ後発のLINEは勝てたのか?
答えは…NAVERに天才がいたからだ。

勝てるハズのない参入タイミング

ネットワーク効果(ネットワーク外部性)という言葉がある。
利用者の数が増えれば増えるほど指数関数的に利便性があがる、という考え方だ。

この考えにしたがえば、LINEは後発ゆえに機能的に差の無いカカオトークには勝てるはずがなかった。だが結果的にLINEは先行する競合を倒してしまったのだ。

勝因はリソースの使い方にある。

異例の物量戦略

LINEの広告費の使い方は異常だ。

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・2011年6月:LINEのサービスリリース

・2011年7月:5000万円を使って10万人紹介キャンペーンを開始

・2011年11月:テレビCM開始(費用は億単位)

LINEをリリースしてからわずかな期間で数億円を投下している。
こう書くと
「なんだ。LINEは広告費で勝ったのね。」
と思うかもしれないが、それは表面的な理解にすぎない。

考えるべきはその"裏付け"だ。

リリース後半年でテレビCMをぶっ込む

今でこそスマホアプリのCMが当たり前になったが、2011年スマホアプリでテレビCMを打ったのはおそらくLINEが初めてだろう。

リリース後、わずか半年で"億単位"の費用をかけてテレビCMを出稿する…。
ここから2つのことが読み取れる。

1つは、リリース前から多額の広告費を投下する計画があったこと。
2つ目は多額の広告費を投下するための裏付け、つまり根拠があったこと。

テレビCMを打つには制作時間を考慮すると3ヶ月前にはそれを決定していなければいけない。したがって8月にはCMを打つことが確定していたハズだ(②)。このグラフ↓をみてほしい。

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上記のグラフからテレビCMを打つことを決定する前月7月の「①5000万円のキャンペーン」に何らかの意図があったことが読み取れる。素直に考えるなら5000万円キャンペーンで何らかの数字が良かったから(②)こそ、テレビCMへの出稿が確定した(③)…と。

つまりある"仮説"が用意されていて、それを証明するために5000万円キャンペーンを打った。それがうまくいったからCMを打つことを決めた、ということだ。

ここまでが断言できる事実。次からは僕の予想だ。

LINEが用意していた仮説とは?

では当時のNAVERは5000万円キャンペーンでどのような仮説を証明しようとしたのだろうか?

5000万円キャンペーンで得られるユーザー数は10万だ。10万ユーザー程度ではネットワーク効果は弱くチャットアプリとしてはほとんど成立していない。10万ユーザーレベルのLINEは今とは比較にならないレベルの"過疎"アプリだった。

だからユーザーの継続率も一人あたりのチャット数も含めてあらゆる指標が意味を成してなかったハズだ。

どれも多額の投資を実行する為の裏付けとしては弱い…。

だが10万ユーザーが生み出す数字の中で有効なモノが2つだけある。

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・10万ユーザーから吸い取った連絡先の中にある"携帯番号の数"
・それによってつながる"一人あたりの平均友人数"

この2つの数字だけが指標として使い物になる。

この2つの指標を使えば、5000万円キャンペーンを行う前に次のような"形"の仮説を立てることができたハズだ。


「累計10万ユーザーを超えると収集した”携帯番号の数”は3千万件を超える。その状態だとユーザーは”平均で2.7人”の友人とつながることになる。」

※数字そのものは"仮"だ。

この仮説を日本の携帯電話の数、平均的な連絡先に乗ってる携帯番号の数、それらが相互に繋がる確率から、ざっくりとした"数式"もしくは"グラフ"の形で導き出したのだろう。

この仮説を証明することで将来的に500万ダウンロード、1000万ダウンロードの段階で友人数がこうなる、という未来予測が可能になる。

その為に5000万円キャンペーンを打ったのだ。

結果的にその仮説が証明されたことは言うまでもない。

当時のLINEは何を目標としていたのか?

ではその仮説は何の為に立てられたのか?

答えは一つしかない。競合に勝つためにいくら投下すれば良いのか判断する為に、だ。

LINEの場合「競合に勝つこと」の定義は「一人あたりつながってる友人数でカカオトークをぶっちぎること」だったはずだ。

 

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2011年、当時のカカオトークは日本では小規模な広告投資しかしてなかったのでイマイチ流行ってはいなかった。

つまりカカオトークは「つながってる友人数」が少なくネットワーク効果が弱かった。とは言え、先行者なので立場はLINEよりも遙かに有利だった。日に日に勢力は増していた。時間さえ有れば確実に日本市場を制覇していただろう。

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※上記グラフの数字に意味はないです。目安。

 つまり成長を続けるカカオトークを一気にぶち抜くためには"短期間"で勝負を決める必要がある。その為に仮説(数式)を"最終確認"するために5000万円のキャンペーンを行ったのだ。 

天才の恐るべき先見性とプレゼン力

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リリース後ひと月で5000万円キャンペーンを打ち、その結果が出たらすぐにテレビCMの制作を始める。広告費や人件費、その他諸々を合わせると少なくとも4億、おそらく5〜8億は必要だっただろう。

この事実からLINE内部に圧倒的な天才がいたことが分かる。この天才はLINEの"企画段階"でカカオトークに勝つ為の費用を割り出し、NAVER上層部に説明をし4〜8億の予算を確保することに成功したのだ。

このことをスマホアプリ未開の2011年にやってのけたのだ。

圧倒的な計算能力とチャットアプリの未来を予測する先見性、そしてそれを上層部に説得できるプレゼン能力…完全に神がかってる。全盛期の孫正義レベルと言っても過言ではない。

この天才はもうLINE社にはいないだろう。今のLINEからはこのセンスを微塵も感じられない。

その彼(天才)はいまごろ動画SNSを手がけて成功し、飽きて別のサービスでも構想しているのだろうなぁ。あー天才になりたい。

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